第37期6回研究会「SNS情報のマスメディアでの利活用」(ネットワーク社会研究部会企画) 上智大学メディア・ジャーナリズム研究所 共催研究会 A Study on Use of SNS Information in Mass Media

「SNS情報のマスメディアでの利活用」

日時:2020年10月1日(木)18:30~20:30

方法:Zoomによるオンライン開催

問題提起者:村上建治郎(株式会社Spectee代表取締役)

討論者:福長秀彦(NHK放送文化研究所)

司会者:音好宏(上智大学)

趣旨:

 スマートフォンの普及は主に空間的制約を開放し、SNSへの写真や動画の投稿などといった人々の情報発信を活性化させたと考えられる。SNSに投稿される情報には一部に誤情報や虚偽情報が含まれているものの、災害や事故などの情報をいち早く入手できることなどから、放送や新聞といったマスメディアもSNS上の情報を活用する状況にある。

 本研究会では、SNS上の膨大な情報をマスメディアがどう利活用するのか、SNS上で拡散するフェイクニュースに対するマスメディアの打ち消し報道を含めて議論したい。まず、情報解析会社である株式会社Specteeの村上建治郎代表取締役に最新のAI技術を用いたSNS上の情報の解析の現状、また、具体的事例として昨今の新型コロナウイルス感染拡大に関連して拡散したフェイクニュースの解析結果などについて報告いただく。このうえで打ち消し報道を研究するNHK放送文化研究所の福長秀彦氏に討論者として参加いただき、議論を深めたい。

株式会社Spectee

SNS上の情報を、AI技術をベースとした画像解析や自然言語解析をもとに重要性や真偽、発生場所を判断して報道機関などに配信している情報解析会社。

参加方法:

Zoomで開催予定です。参加をご希望の方は、9月28日(月)17時までにネットワーク社会研究部会・佐藤宛 t-sato@j-ba.or.jp に氏名・所属をご連絡ください。前日(9月30日)17時までに送信元のメールアドレス宛にZoomへの接続情報などをご案内します(未着の場合は佐藤までご一報ください)。

開催記録

記録執筆者:佐藤友紀(日本民間放送連盟)

参加者数:44人(オンライン・zoom利用)

報告:

 本研究会は、SNS上の膨大な情報をマスメディアがどう利活用するのか、SNS上で拡散するフェイクニュースに対するマスメディアの打ち消し報道を含めて議論することを目的として開催した。

 問題提起者として株式会社Specteeの村上建治郎代表取締役をお迎えした。Specteeは、SNS上の情報を、AI技術をベースとした画像解析や自然言語解析をもとに重要性や真偽、発生場所を判断して企業や自治体などに配信している情報解析会社であり、多くの報道機関がそのサービスを利用している。村上氏は、災害時にはSNS情報に有用性を感じる人が多い一方で、ネット上の誤情報に困った経験を持つ人も半数程度いるといった調査データを示し、東日本大震災の際のボランティア経験から、マスメディアと異なる情報ソースとしてSNSの情報を整理して伝える必要性を感じたことがSpectee設立のきっかけとなったと同社を紹介した。このうえで、SNSにおけるデマを「伝言ゲーム型」「犯人捜し型」などの6タイプに分類して説明、また、デマ拡散のメカニズムを、マスメディアがSNSの投稿を記事にすることで広まる「メディア増幅型拡散」、コロナ禍の中でトイレットペーパーが不足するといった投稿に対してこれを否定する投稿が拡散を増長する「対立型拡散」などの4類型に分類して説明した。さらに、ディープフェイクの例としてAI技術を用いて作成されたフェイク動画の紹介したうえで、デマや誤情報をAI技術で判定し、専門チームが分析するといったSpecteeのデマや誤情報に対する取り組みを報告した。

 続いて、NHK放送文化研究所の福長秀彦会員が「トイレットペーパーが不足する」という流言と買いだめの関係について、Twitterの投稿分析やインターネット調査の結果を基に発表した。先ず、流言発生の流れを①マスク不足で人々がオイルショック時のトイレットペーパー買いだめを想起→②シンガポールや香港などで流言によって買いだめが起きたという報道→③海外と同様の流言が国境を越えて発生、と整理した。一方、買いだめは、流言が発生した後、各地で散発的に起き始め、2月末日(27日~)に急激に全国に波及したが、この急激な波及を主として促したものは、空の商品棚を映し出したテレビの買いだめ報道であると分析した。また、人びとが買いだめをした・しようとした主な理由は「自分が流言を信じたから」ではなく、「流言を信じた他人に買いつくされてしまうと思ったから」であるというインターネット調査の結果を紹介した。こうした結果を踏まえ、買いだめのような群衆行動がエスカレートする前に流言の拡散を如何にして抑え込むか、そのための正しい情報をどのように増幅して伝えるかを考える必要があると論じた。  

 フロアを交えた議論では、店舗だけでなく工場の取材を通じた映像の選択などによる流言の否定報道の工夫のほか、細やかな情報が届けられるコミュニティメディアとマスメディアの連携などを議論した。村上氏は、リアルの世界とサイバー空間の境目がなくなりネットでの取材も重要となった今、ネットで得た情報をメディアとしてどう伝えるのか、メディアが介在する価値を考えていく必要があると指摘した。また、福長氏は、メディアは個々の流言を否定することにとどまらず、流言を否定する報道の効果やあり方などを事後検証し、知見を集積する必要があると指摘した。