第4回 研究会 ジャーナリストネットワークによる新しいジャーナリズムの可能性【開催記録】

▪️主催:
 日本メディア学会 ジェンダー/ダイバーシティ研究分科会

▪️日時:
 2026 年03月22日(日) 16:00~18:00

▪️場所:
 大妻女子大学 千代田キャンパス H棟 3階 313講義室(対面)

▪️開催形式:
 対面方式のみ

▪️登壇者:
 阿久沢悦子さん (生活ニュースコモンズ) 秋山理砂さん(日本女性記者協会)

▪️討論者:
 清水麻子さん (中央大学非常勤講師)

▪️司会者:
 青木紀美子さん (NHK 放送文化研究所)

▪️参加人数:
  40人

▪️ 開催記録:

 本研究会では最初に司会から企画趣旨やタイムテーブルの説明があり、続いて阿久沢悦子さんと秋山理砂さんからそれぞれの活動内容についての報告、清水麻子さんからはニュース組織を超えて女性ジャーナリストがつながることの意義の提示と、海外の実例紹介などが行われた。その後、登壇者間の議論を経て休憩をはさみ、会場からの質疑応答を実施した。

 阿久沢悦子さんからの報告では、「生活ニュースコモンズ」は大手新聞社を退職した女性記者が中心となり2023年4月に立ち上げたが、その背景には、新聞社勤務時に抱いてきた危機感や経験もあったという話があった。それは、新聞社に残る旧来の体質(長時間労働、男性的な働き方、セクハラ、パワハラ)を理由に優秀な女性記者が辞めてしまうという危機感、デスクや編集長に女性がいないために性差別や性搾取・女性の貧困・LGBTQ・ジェンダーなどに関する報道が極端に少ないという現状、“見せかけの公平”を保つためになされる男性上司からの指摘(例えばDVの問題を取り上げようとした際に「(DVをする)夫の言い分も聞いて載せるべき」など)により記事が棚上げになってしまうなどの経験である。こうしたことをふまえ、生活ニュースコモンズが「心がけていること」として、旧来の「政治」「経済」「社会」「国際」の枠を取り払って、生活者が発する「当事者の声」をなるべくそのまま伝えるようにしていること、権力のない側からものをみて報道しようとしていることなどが挙げられ、これまで発信してきた記事のほか、米国の「The 19th」、インドの「カバル・ラハリ」など各国で展開されている”女性メディア“とも連帯し、その翻訳記事を掲載していることなども紹介された。

 秋山理砂さんからは「日本女性記者協会」の活動についての報告があった。きっかけは2023年10月にソウルで開かれた日韓女性記者フォーラムにおいて「韓国女性記者協会(KWJA)」との交流が始まったことであったという。60年の歴史をもつKWJAが、女性記者の海外留学派遣やリーダーシップセミナー開催などさまざまな活動を行っていることを知り、同じように女性記者同士で学びあい支え合う場が欲しいと組織化を決意し、設立準備をしながら勉強会開催や韓国との交流を続け、2025年11月に設立記念フォーラム開催に至ったと報告した。日本の新聞・通信社の女性管理職の割合は2025年4月時点で10.8%にすぎないことや、昨年実施した女性記者へのアンケート調査では、女性の従業員や記者の数が多くなれば自然と女性の管理職が増えると思うかどうかを尋ねた問いに対して、若い世代ほど悲観的な答えが多かったことも紹介され、日本女性記者協会がかかげる「ニュースルームに多様性を」という目標が必要であること、メディア企業で働く女性たちがつながって学び合う場をつくり、彼女たちがあきらめることなくキャリアを積むためにサポートができる組織となるよう取り組んでいると語った。

 清水麻子さんは、「なぜ今、ジャーナリストネットワークなのか」という観点から、米国・北欧におけるネットワーク形成の歴史、日本での広がり、女性ジャーナリストネットワークの意義と課題を、実践例の紹介もまじえ提示した。清水さんが「女性ジャーナリストネットワークの意義と役割」として挙げたのは、①男性中心のニュース組織の改革、②親密圏(セーフスペース)の確保、③周縁/大事な課題の解決アジェンダ形成、である。また、SNSや分断の時代に、男性など異なる立場の人々とどう連携・対話していくのかといった課題に対する“一つのヒント”として、I.M.Youngの「差異の政治」(抑圧された人々は自らの経験を公共圏に持ち込む必要がある/女性など同じ立場の人々が、まず安全な場でつながる/そのうえで、異なる立場と連携し政治を形成するという流れが必要である)を提示した。

 その後は、司会の進行で登壇者間の議論に入り、休憩をはさんで、会場からの質疑とディスカッションを行った。 そこでは、ネットワークや組織、安心して話せる場を作ることの難しさについて質問があり、登壇者からは苦労した点についての具体的事例や今後の課題が提示されるとともに、顔が見える関係を築き同じ目標にむかって連帯できる仲間が存在することの重要性が共有された。

 最後に司会者が、女性のネットワークのみならず、研究者とジャーナリストなどさまざまなネットワークが増えるなかで、いろいろなネットワークが並行して重なりながら変化を生んでいくであろうこと、そうした中で、この研究会で出されたさまざまな問題提起や視点が、今後このテーマについて考えていくうえでの出発点になれたのではないか、と述べて研究会を締めくくった。

▪️記録作成者:
 太田眞希恵(NHK放送文化研究所)