

日本メディア学会は、第38期より現在の名称へと改め、激動するメディア環境に対する危機感と機動力をもって運営を進めてまいりました。学会大会の参加者も年々増加しており、今回の秋季大会では 240 名を超える皆さまにご登録いただきました。会員の皆さまの研究にかける熱意、ならびに社会からの高い関心を心強く感じております。ご参加くださいました皆さまに心より御礼申し上げます。
今回の秋季大会のハイライトとして、国際シンポジウム「韓国におけるメディア環境の変化と市民の分極化~尹前大統領の非常戒厳・罷免と大統領選をめぐって」を開催いたしました。本シンポジウムでは、韓国の政治情勢とともに、世界的な課題である世論の分極化を取り上げ、日本のメディア状況にも触れつつ熱のこもった議論が展開されました。
また今回の大会では、この国際委員会企画にとどまらず、東アジア、北米、ヨーロッパ、アフリカなど多様な地域を対象とした研究発表が行われました。さらに、ジェンダーやマイノリティへの配慮を踏まえた研究も目立ち、広い視野と多様性への感度を備えた研究が着実に広がっていることを実感しております。学会の発展と成長を改めて感じる大会となりました。
研究の発展には、多様な発想や思考を尊重し、誰もが思う存分研究に打ち込める環境づくりが欠かせません。こうした理念のもと、第39期理事会では「日本メディア学会ダイバーシティ宣言」が採択され、第40期の最初に発表いたしました。
この宣言を実効性あるものにしていくためには、今後もさまざまな工夫や取り組みが求められます。
今回の大会では、昼の時間帯にダイバーシティ推進ワーキンググループ主催の「メンター制度導入に向けた意見交換会」も開催されました。身近に同じ領域の研究者がいない場合でも、学会内に相談できる相手がいれば、研究活動に不可欠な知見を先輩から学べるのではないかという思いから企画されたものです。私自身も参加いたしましたが、若手研究者を中心に30 名以上が集まり、大変活気のある会となりました。
より多くの方々に学会活動へ参加していただくためには、多様なライフスタイルに応じたイベント運営や情報提供のあり方など、さらなる工夫と改革が必要です。その際には、会員の皆さまの声を積極的に反映していきたいと考えております。今後も、学会員同士が対話できる場を継続的に設けてまいりますので、どうぞ気軽にご参加ください。
2025年秋季大会が、皆さまの好奇心を刺激し、研究の新たな地平へと歩みを進める契機となりましたら幸いです。
今後とも、学会活動への積極的なご参加とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
日本メディア学会会長
林香里