2026 春季大会レポート 2026 Spring Conference Report

2026年6月27日(土)・28日(日)、日本メディア学会2026年春季大会が武蔵大学(東京)にて開催されました。あいにくの台風の影響で、初日は開始時刻を午後に繰り下げての開催となりましたが、両日合わせて407名にのぼる会員・非会員のみなさまにご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!

本大会では、2名の会員の方に大会レポーターをお願いし、それぞれの視点から大会全体を見渡す記事を執筆していただきました。レポーターを務めてくださった東京大学大学院の野津結希さん、バルセロナ自治大学(Universitat Autònoma de Barcelona) の Minerva Terradesさんに、改めてお礼申し上げます。お二人の取材にご協力くださったみなさまにも感謝いたします。

※以下、氏名の敬称は、事務局により「さん」に統一させていただきました。

【春季大会1日目(6月27日)】

2025年秋のオンライン大会には参加していましたが、日本語を使用言語とする対面の学会で発表するのは、今回が初めてでした。これまで私はヨーロッパを中心に、日本やアジアでも学会発表を重ねてきましたが、そのいずれも英語、あるいは日英併用の場でした。その意味で、本大会は新鮮な経験の連続でした。

まず強く印象に残ったのは、運営の正確さと厳密な時間管理です。これまで参加した学会のなかでも、とりわけ時間効率の高い運営だと感じました。5分間の休憩も含めてすべてが定刻通りに進行し、台風の影響で初日の開始が2時間遅れたにもかかわらず、2日間の多数の発表が滞りなく配置されていました。また、林香里会長が学会の中核的な方針として掲げる多様性と包摂性が、随所に具体的なかたちで現れていた点も印象的です。世代・専門分野・経歴の異なる研究者が集い、地域性やマイノリティ、トランスナショナルなアイデンティティといった幅広いテーマをめぐって、友好的かつ相互に敬意のあるやりとりが交わされていました。個人・共同研究発表、討論者を伴うワークショップ、ポスターセッション、シンポジウムなど、セッション形式の多層性にも、その理念が反映されていたように思います。

土曜日(27日)、大会は正午に開始され、私は個人・共同研究発表セッションに参加しました。そこでは雑誌メディアが歴史的・ジェンダー的・マルチメディア/クロスメディア的観点から分析されており、私自身もこのセッションで発表を行いました。セッションはスムーズに進行し、発表後の質疑応答では緊張もありましたが、拙い日本語にもかかわらず、聴衆の方々からは示唆に富む質問やコメント、そして温かい励ましの言葉をいただきました。

午後には本会場でファン研究に関するシンポジウムが開催され、岡部大介さんはファンダムにおける「遊び」に注目し、生活世界の観点からDIYコスプレなどの日常的実践を提示されました。またオンライン登壇の陳怡禎さんは、「遊び」としてのファン文化が政治的運動へと接続される過程を、台湾や韓国の事例を通して論じ、政治指導者のタレント化や、ファン的実践が政治領域へと転用される「アフェクティブ・アクション」について議論されました。

初日は懇親会で締めくくられ、豪華な料理とともに和やかな雰囲気の中で名刺交換や自己紹介、研究内容の説明が活発に行われました。これほど多くの名刺交換を経験した大会は初めてでした。(Minerva Terrades)

対面形式の大会に参加するのは今回が初めてで、楽しみにしていました。初日の27日は台風の影響で開始が正午まで繰り下げられましたが、大きな混乱もなくスムーズに参加でき、運営のみなさまに感謝申し上げます。

1日目は個人・共同研究発表を中心に聴講しました。発表は15分で後半は質疑の形式です。台湾の活動写真弁士・高松豊次郎に関する研究、バトラー理論を検討する理論研究、YouTubeコンテンツのマルチモーダル批判的言説分析など、メディア史から理論研究まで多様な発表を聴きました。個人・共同研究発表は豊富な写真や動画の事例などを提示したものが多く、論文だけでは得られないイメージを得ることができ、メディア研究ならではだと感じました。会場となった武蔵大学の教室はガラス張りで、どのような発表をしているのか、聴いている人の様子はどうかといったことを、外からも見ることができます。投影されている資料に興味をもって途中から飛び入り参加する人の姿も多く見かけました。

夕方のシンポジウムは近年非常に活気が出ているファン研究についてです。修士・博士の院生を中心に、私の周りでも研究している人が多い印象のあるテーマです。しかしシンポジウムでは、長くファン研究に取り組んでこられた登壇者から、かつては全く人気のないテーマだったという話もあり、驚きました。1日目の多くは個人・共同研究発表でマスメディア研究の最前線を感じましたが、このシンポジウムでは学会の歴史と研究に長く取り組まれている重みもまた感じることができました。(野津結希)

【春季大会2日目(6月28日)】

日曜日(28日)には、芸能人やアイドル、『あまちゃん』における「故郷」から「地元」への再概念化、さらにはグローバル・ジャーナリズムにおけるビザ問題など、多様なテーマの個人・共同研究発表セッションを聴講しました。その後、放送法をめぐるワークショップに参加し、「質的公正」や「公正性」について議論が行われました。特に、2025年7月12日のTBS報道特集に対する参政党の対応事例を通じて、デジタル時代におけるジャーナリズムのパラダイム・シフトが検討されました。机上には資料のコピーが置かれているのみで、スライドの投影はありませんでした。教室を埋め尽くす大勢の参加者を前に、まるでメディア史そのものを体験しているかのような場に立ち会うことができました。

大会は、テレビの未来をテーマにしたシンポジウムで締めくくられました。記者、元アナウンサー、ドラマ評論家など、豊富な経歴を持つベテランのメディア関係者が登壇し、職業経験や現場の写真を紹介しながら、当時の厳しい労働環境やその実態を含めた体験を語ってくださいました。残念ながら、私は途中で退席せざるを得ませんでした。 今回の大会では、私にとって新しいことが数多くありました。例えば、学会の予算が公開される場面に立ち会ったのは初めてでした。大会を通して最も印象に残ったのは、時代とともに生じてきた変化そのものでした。理論的な視座の変化はもちろん、扱われるテーマや事例の幅の広がり、発表における技術への依存度の高まり、そしてメディア界における政治的含意の表れ方。そのいずれもが、この大会の中に凝縮されているように感じられました。こうした点を目の当たりにすることができ、非常に実り多い週末となりました。(Minerva Terrades)

2日目はワークショップを中心に聴講しました。午前はワークショップ「映像ジャーナリズム教育の現在地と未来像」に参加しました。大学での映像ジャーナリズム教育とNHKにおける若手への番組制作の教育がテーマです。大学の映像実習の事例検討や、NHKの方からは実際に放送された番組や台本を例に若手ディレクターの問いをどう明確にしていったのか、貴重な話を伺えました。会場からは、大学で映像制作の授業を担当する教員の方々の質疑が相次ぎ、研究者と実務家がフラットに対話する様子が印象に残りました。

昼休みのプログラムも充実していました。まずはポスターセッションのコアタイムです。4名の方が昼食会場の近くでポスター発表を行いました。非常に多くの方が昼食の時間も惜しんで発表を聴いていました。

同じく昼休み時間に「メンターセッション」も行われました。これは若手の学会メンバーに向けて今後のアカデミアのキャリアや実績の作り方などを話す場です。座長の田中東子さんの進行のもと、和やかな空気で3名の登壇者が自身のキャリアについてお話をされました。「博士課程の過ごし方」「学振をどのように考えるか」といった率直なお話が次々と語られ、少しでも自分のキャリアが参考になればという登壇者の方々の思いが伝わってきました。私が以前参加した他の学会の大会ではこのようなセッションはなかったので、非常に貴重な場だと感じました。

午後もワークショップ「「障害とメディア」を実践する・実装する」に参加しました。当事者の立場から発表が行われ、3Dプリンタや美術館・博物館をめぐるメディア研究についてディスカッションが交わされました。会場は机のない席も含めて満員でした。

2日間を通じて印象に残ったのは、研究者/実務家、若手、当事者などさまざまな立場の方々が参加し、フラットで開かれたディスカッションが行われていたことです。質疑が盛り上がり、終了後も教室や廊下で続けて立ち話をしているようなセッションも多数ありました。参加者の熱気に刺激を受け、充実した2日間となりました。(野津結希)

レポート・写真:Minerva Terrades(バルセロナ自治大学)
野津結希(東京大学大学院)
編集・構成:第40期事務局幹事 安ウンビョル(京都女子大学)