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第33期第6回研究会「「戦争社会学」とメディア史研究」(メディア史研究部会企画)終わる

日   時:2012年5月12日(土) 14時〜17時
会   場:同志社大学今出川キャンパス 徳照館1 1階会議室
問題提起者:野上 元(筑波大学)
討 論 者:與那覇潤(愛知県立大学)
司   会:福間良明(立命館大学)
参 加 者:35名
記録執筆者:福間良明

「戦争」に関する研究は、従来、政治学や歴史学で多く扱われてきたが、メディア史研究や歴史社会学の方面でも、この領域への関心が高まっている。しかし、その方法論や分析手法は、メディア研究のみならず、思想史、言説分析、システム論、ライフ・ヒストリー研究等、多岐にわたる。

それだけに、方法論の共有化はさほど進んでおらず、むしろ専門分化が進行しているようにも思える。メディア史研究ではこの方面に一定の蓄積はあるものの、より広く「戦争(の)社会学」を見渡してみることで、新たな方法論や視点へのヒントを得ることもできるのではないか。

こうした問題意識のもと、本研究会では、野上元・福間良明編『戦争社会学ブックガイド』(創元社、2012年3月刊)を取り上げながら、
 ・「戦争社会学」はいかに構想されたのか(あるいは、構想され得るのか)
 ・「戦争社会学」を構想するうえで、メディア(史)研究は、どのように関わることができるのか。それによって、いかなる新たな成果を生むことができるのか
 ・そこにおいて、歴史社会学・歴史学・思想史研究等の分野とメディア研究との関係は、どう位置付けることができるのか
といった点について、議論を行った。

報告者・野上元氏は、ご自身の研究歴や1990年代半ば以降の研究状況を見渡しながら、「戦争社会学」の変遷や問題関心の変化、近接する学問領域との相互交渉に関し、見取り図を提示した。討論者・與那覇潤氏からは、歴史学と戦争社会学(あるいは歴史社会学)との区分をどう考えればよいのか、多様性が提示される一方、全体像を描く営みをいかに構想できるのか、冷戦以降の状況を捉えるうえで、既存の学問的見取り図をどう生かすことができるのか(できないのか)といった問いが提起された。

フロアからは、総力戦体制と現在の関わりをどう捉えればよいのか、歴史学と(歴史)社会学・メディア史研究の相互交渉を、どう学問的な生産性につなげていくのか、といった点について、活発な意見が出された。

「戦争」とメディア史研究を考える上で、多様な論点が浮き彫りにされたが、そのことは、今後のこの分野の広がりを示唆するものと思われた。