研究会一覧に戻る

第33期第5回研究会「地域発ドラマの現在」(放送研究部会企画)終わる

日  時:2012年4月21日(土) 13:30〜15:30
会  場:日本大学芸術学部江古田校舎 放送学科ミーティングルームCD
問題提起者:重松圭一(関西テレビ)
討 論 者:河合理香(NHK大阪/前名古屋放送局)
司   会:中町綾子(日本大学)
参 加 者:32名
記録執筆者:中町綾子

NHKの地方制作局、あるいは民放ローカル局が制作する「地域発ドラマ」が注目を集めている。近年の各局の積極的な取り組みと高い完成度が評価されてのことだ。この研究会では、関西の制作局のドラマ制作への取り組みの実際と課題について検証し、「地域発ドラマ」の意義と可能性について議論した。

まず、関西テレビの編成制作局制作部副部長・重松圭一氏と、元NHK名古屋放送局(現・大阪放送局)ディレクター・河合理香氏より、それぞれの局での自社制作ドラマと「中学生日記」の取り組みについて説明がなされた。重松氏は企画の方向性と制作環境の在り方についてふれ、東京を意識しすぎないローカルドラマ、エンタテイメントの「地産地消」の可能性と意義について提言を行った。河合氏は、「中学生日記」の制作体勢を、各話の企画の成り立ち、出演者のキャスティングなどを含めて紹介し、番組が地域と密接な関係の中に制作されていたことを報告した。ともに、東京とは違った文脈・体制で制作され、そこに大きな意義が見出されることが明らかとなった。

後に会場からの質疑を中心とした議論の場を設けた。局としての番組制作者の遺伝子、局の風土をどう考えるかとの質問には、それぞれの制作環境(組織体制・規模)と人材育成の在り方についての言及があった。また、テーマ設定や内容について、質問者から名古屋の教育制度の在り方と番組との関係への指摘があった。重松氏は関西では、恋愛ドラマよりもバラエティ番組での素人の恋愛の話のほうがおもしろいという感覚があるとした。議論は、テレビドラマだけでなく、他のジャンルの番組におけるエンタテイメントや文化の在り方にも及んだ。関西の芸人がステップアップとして東京のバラエティ番組で大きな存在感を示していることも関連する議題となった。

会場には、関東圏、関西圏からの研究者の参加があり、またテレビ番組の制作を志す学生も出席した。地域発テレビドラマの可能性が説得力をもって示され、そのことでキー局が制作する番組の問題点も逆照射されるなど、刺激的な研究会となった。