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第32期第14回研究会「キャンパスメディアとしてのエリアワンセグを考える」(マルチメディア研究部会企画)終わる

日 時:2011年2月19日(土) 18:00〜20:00
場 所:関西大学第3学舎(社会学部)1階 B101(A)教室
報告者:里見 繁(関西大学社会学部)
    川崎正規(朝日放送)
司 会:黒田 勇(関西大学社会学部)
参加者:32名

日本の放送界においては、本年7月のアナログ波停止に関連して、さまざまな技術的可能性が模索されている。エリアワンセグ放送もその中の一つである。

これまで、イベント会場等で実験されてきたエリアワンセグであるが、昨年、関西大学では、朝日放送の協力を得て、キャンパスメディアとしての可能性を探るべく実験免許を取得し、9月から11月にかけて、4回にわたりキャンパス内で放送実験を試みた。一回目は、オープンキャンパスに来学する高校生向けに、入試情報とキャンパスでのイベント情報を生放送と録画で提供した。二回目は、大学挙げての防災訓練時に、対策本部に仮設スタジオを設置し、災害時の避難情報を提供した。また学園祭では、学生たちが事前に収録したビデオを来学者に向け放送、また、関大で開催された「地方の時代」映像祭においては、贈賞式とシンポジウムの模様を学内で生放送した。これらの実験を通して、エリアワンセグがキャンパス内で有効なメディアとなるにはいくつかの課題が報告された。

まず、朝日放送の川崎氏から、エリアワンセグの技術的可能性や法的規制等についての説明があり、次に里見会員から、実際の実験での成果と課題について以下のように紹介があった。

①平坦で開放された空間では電波がかなり遠くまで飛び、良好な視聴環境が得られるが、一般に学舎が建て混んでいたり、樹木が多いキャンパスにおいては、視聴範囲がかなり限定されたものとなる。それを克服するには複数のアンテナが必要となり、コスト面で克服しなければならない点がある。次に、②視聴者側の問題として、エリアワンセグに指定された特定のチャンネルに合わせる作業が容易ではなく、エリアワンセグの視聴が常態化していない状況では、多くの視聴者を獲得できなかった。③現在の携帯のバッテリーでは、長時間視聴に耐えられず、屋外での長時間視聴の意欲をそいだ。

一方、キャンパスメディアとして評価できる点は、映像制作に関する学習効果である。比較的安価な送信設備で放送できるので、映像やメディア専攻の学生の制作実習の成果発表の場として位置付ければ、学生の学習への動機づけという点では大きな効果が上がることが明らかになった。

議論では、一定空間でのイベントメディアとしての可能性についての高い評価と、震災等での減災メディアとしての可能性について質問と意見が集中した。とりわけ、地域の避難地となる大学キャンパスにおける緊急の情報メディアとして、技術的にも制度的にもより精密な議論を継続する必要性が強調された。