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第32期第10回研究会「メディアスポーツを考える」(マルチメディア研究部会企画)終わる

日 時:2010年7月23日(日) 15:00〜17:30
場 所:関西大学 東京センター(JR東京駅日本橋口)
報告者:松井貴之(大修館書店)「送り手が意識するスポーツ中継の視聴像-「限界芸術論」の観点から」
    水野由多加(関西大学)「広告論理から見たオリンピック・スポンサード」
討論者:松井修視(関西大学)
    黒田 勇(関西大学)
司会者:杉本厚夫(関西大学)
参加者:32名
記録執筆:黒田 勇

松井貴之氏からは、「送り手が意識するスポーツ中継の視聴像-『限界芸術論』の観点から」と題して、スポーツ中継の発話分析やスポーツ中継の解説者に対して行われたインタビューをもとに報告がなされた。報告は、50年代に議論された限界芸術論を援用して先のデータを分析し、スポーツ中継の送り手たちが、どのような視聴者イメージを持っているのかを明らかにし、実際のスポーツファンよりも低いスポーツリテラシーをもった存在として視聴者がイメージされていると考察した。そして、そうしたイメージが送り手に維持されていることがスポーツ文化に及ぼす影響について仮説的な考察がなされた。

その後のディスカッションでは、コメンテーターやフロアーから、限界芸術論というフレームを用いた際に、いかに新しい知見を生み出すのか、そうした際にテレビ中継を観賞対象としていいのかなど、データを分析する際の方法論的枠組みについて活発に議論がなされた。また、「みるスポーツ」は多様化しており、視聴者側もメディアを変えながら(例えば、地上波・BS・CS・インターネット・ツイッター等)鑑賞している点をどのように分析対象として捉えていけばよいのかについても検討された。

後半は、水野由多加会員に「広告論理から見たオリンピック・スポンサード」と題して、オリンピックとスポンサーの関係についてスポンサーの広告論理の視点からとらえる報告がなされた。オリンピックにおけるスポンサードは売り手優位であり、少数者間高額取引になっている事実がデータを用いながら示され、その背景にはグローバル・ビジネスが存在していると共にローカル・スポンサーとのコンフリクトが起こっているとの指摘もあった。さらに、コカ・コーラに代表されるグローバルスポンサーのスポーツイベントとのかかわりについて、歴史的な視点からも考察され、費用対効果をこえたスポンサード文化の存在についても論じられた。

コメンテーターからは、ワールドカップにおけるオフィシャルスポンサーのイベント独占状況を例に挙げ、「メガイベントの公共性とスポンサーの独占状況の矛盾」についても、今後研究の必要性が提起された。

なお、この研究会は日本スポーツ社会学会と共催の形式をとり、両学会にまたがる課題領域についての意見交換と交流の場ともなった。