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第32期第3回研究会「セットから見るテレビ番組~『テレビ美術』研究の可能性~」(放送研究部会)終わる

日 時:2010年2月2日(火) 18:00~20:00
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部2号館9階93B教室
問題提起者:廣谷鏡子(NHK放送文化研究所)
      米倉 律(NHK放送文化研究所)
討 論 者:長谷正人(早稲田大学)
司  会 :丹羽美之(東京大学)
参加者:38名
記録執筆:丹羽美之

テレビ番組には様々な大道具、小道具、衣装、メイクなどが使われている。これらの「テレビ美術」は、映像表現としてのテレビ番組を演出する上で、どのような役割を果たしてきたのか。この研究会では、テレビ番組の脇役としてこれまでほとんど顧みられてこなかった「テレビ美術」の意味や意義について議論した。

まず、テレビ美術研究に取り組みはじめた廣谷鏡子氏、米倉律氏より、テレビ美術研究の現状について報告が行われた。米倉氏がテレビ美術研究の目的や問題意識、方法や対象について説明した後、廣谷氏が具体例としてニュース番組におけるテレビ美術を取り上げ、詳細な分析を紹介した。磯村尚徳や木村太郎がキャスターを務めた「ニュースセンター9時(NC9)」(NHK)と久米宏の「ニュースステーション」(テレビ朝日)のスタジオセットが詳細に比較され、テレビ美術が映像表現としてのニュース番組に、様々な形でリアリティや臨場感、説得力や信頼性を付与していることが明らかにされた。

2人の問題提起を受けて、長谷正人氏はテレビ美術研究の意義をテレビ文化論的な観点から考察した。長谷氏は、「ザベストテン」(TBS)のような歌謡番組や、現代のバラエティ番組のスタジオ空間と、ニュース番組のスタジオ空間との類似性を例に出しながら、テレビ美術研究が、番組ジャンルを越えて、テレビというメディアそのものの特性を考えるための重要な手がかりになることを指摘した。

会場にはテレビやジャーナリズムの研究者はもちろんのこと、デザイン史やアートに興味のある学生、実際に制作現場でテレビ美術を担当しているスタッフの方々も多数参加し、熱心な議論が行われた。テレビ研究に新しい角度から光を当てる大変有意義な研究会となった。