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■ 第31期第8回研究会(放送研究部会企画)終わる


テーマ  :4千万台突破、BSの未来
日 時:12月8日(月) 19時〜21時
場 所:日本新聞協会大会議室(日本プレスセンタービル7 階)

報告者:北 林 由 孝(ビーエスフジ・代表取締役社長)
  「BSデジタル放送をめぐる現状と展望」
報告者:山 本 博 史(メディア評論家)
  「多メディア状況におけるBSデジタル放送の役割と課題」
司 会:上 原 伸 元(東京国際大学)

参加人数:30人
記録執筆:上 原 伸 元


 2000年12月にBSデジタル放送がサービスを開始してから8年が経過した。2008年8月には受信機の累計出荷台数も4,000万を突破し、総務省は、2011年のBSアナログ放送の終了にともなう空き周波数帯を開放し、さらに新たなチャンネル割当を行うことを発表している。こうした近年のBSデジタル放送をめぐる政策、産業両面での動きをふまえ、本研究会では、ビーエスフジの北林氏とメディア評論家の山本会員の報告を基に、BSデジタル放送をめぐる制度、事業両面に関する検討を行った。

 ビーエスフジの北林氏は、BSデジタル放送は当初、「サービス開始1000日で視聴者1000万」をスローガンとしたが、実際に達成したのは4年後で、その後、急速に普及拡大したとし、番組やサービス面では、HDTV(高画質放送)や、地上波で放送されないスポーツや韓国ドラマが好評で、日記式調査では平日19時〜23時の接触率(BS民放5局)が9.5%に達し、経営面でも2006年にビーエスフジとBSジャパンの2社が、2007年にはBS民放5局が全て単年度黒字を達成したという。

 BSデジタル放送の今後は、新チャンネル割当に伴う新規事業者の参入、さらに総務省が検討中のBSと東経110度CSデジタル放送の制度的統合によって、チャンネル競争が加速し、さらにリモコンの高度化でチャンネル・ムーブが簡易になる一方で、画質競争が進展するため、画像に優れるBSデジタル放送は優位にあるとの見解を示した。

 一方、メディア評論家の山本氏は、制度面からBSデジタル放送に関する検討を行い、現行制度や、総務省が現在、検討中の事項についての見解を示した。例えばBSと東経110度CSデジタル放送の制度的統合を前提に、総務省が提示しているマス・メディア集中排除原則については、支配可能な衛星中継器数に関する根拠の提示が不十分であるとしている。

 また、地上デジタル放送の遠隔地カバレッジ拡大が目的の衛星セーフティネットの導入で、現行の3チャンネルから2チャンネル体制に移行するNHK・BSについては、移行後の不透明な見通しに懸念を表明し、NHKの将来的な役割も含めた検討の必要性を指摘した。その他、BSの番組内容については、テレショップ番組は事実上のチャンネル・リースと考えることができるとしながらも、広告放送の規制については、規制する広告放送の種類を明確化することの重要性を指摘している。

 北林・山本両氏は総括として、近年の放送用送信技術のリソース拡大による放送用周波数の希少性低下という見方には否定的な見解を示し、実際の事業展開の上ではBSを含む放送用周波数の有限性と希少性という価値は依然有効であり、それゆえに多くの事業者が新規参入を目指していると指摘した。

 報告後の質疑応答においては、研究会出席者の多くを放送事業者が占めたこともあり、2011年以降のBSデジタル放送を含む有料放送市場の展望や、現在、議論となっているテレショップ番組の問題など、放送事業に直接関連したトピックを中心に活発な議論が展開された。