研究会一覧に戻る

■第30期第4回研究会(放送研究部会企画)終わる


テーマ:「東アジアの相互理解とメディアの役割〜民族間の対話促進のために〜」

問題提起者:岳川夫(中国上海・華東政法学院人文学部長)
討 論 者:玄武岩(東京大学)
      渡辺武達(同志社大学)
司   会:佐伯順子(同志社大学)
日時:2005年12月15日(木)13:00~15:00
場所:同志社大学今出川校地 明徳館21番教室度


 2005年度秋季研究発表会(10月15日、東京女子大)における放送研究部会企画ワークショップ「国際放送と文化戦略〜アルジャジーラとアリランTVを中心として〜」でも明らかになったが、現在のメディア、とりわけ放送における国際情報の特徴をながめるとそれが発信地(者)あるいは受信地(者)にとっての利害による制約を色濃く受けていることがわかる。

 このことはまた現在の日本の放送法がNHK国際放送の「編集に当たっては、我が国の文化、産業その他の事情を紹介して我が国に対する正しい認識を培い、及び普及すること等によって国際親善の増進及び外国との経済交流の発展に資するとともに、海外同胞に適切な慰安を与えるようにしなければならない」などと、日本の利益を主張するだけで、グローバルな相互理解という視点を欠いていることへの注意喚起の必要性にもつながってくる。こうした見地から、この部会研究会では日中、日韓の政治・経済はもちろんのこと、教育問題で必ず出てくる歴史の問題をふくむ対立をメディアはどう取り扱っていけばよいのかについて、中国・韓国・日本の学者が討論する形式により、放送の役割という視点から問い直してみた。

 まずゲストの岳氏は先の大戦に触れ「国家、民族間の対立は、なぜ相互の理解と協同作業で解決できなかったのか」と問題提起。小泉首相の靖国神社参拝問題を日本人自らが考えるべきだとしたうえで、儒教を背景にした三カ国の文化交流について「メディアは対立をあおるのでなく、相互交流を尊敬する民族精神について報道すべき」と話した。玄氏は朝鮮半島をめぐる国際情勢を踏まえ、日本のメディアに韓国への厳しい見方が広がっていると分析。「葛藤と対立を浮き彫りにするメディア環境が生まれている。市民の側から地域の共通メディアをつくる議論をすべきでは」と述べた。渡辺は「グローバル化といいながら、国民がメディアを通じて見る世界像は実はローカルな姿だ」と指摘。真の共通理解に向けた地域ネットワークづくりの可能性を示し、前提として互いの徹底した議論の必要性を訴えた。

 なおこの研究会については同志社大学メディア・コミュニケーション研究センターの協力を得て、中国から問題提起者を招くことができた。参加者は同志社大学の学生をふくめ、約200名であった。

(記録原稿執筆:渡辺武達)