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■ 第30期第3回研究会(マルチメディア研究部会企画)終わる


テーマ:「地上デジタル放送の『ワンセグ』サービスの可能性と課題」

報告者:石川浩一氏(NHK)
討論者:石川昌行氏(NTTドコモ)
司会者:松田美佐氏(中央大学)
日 時:2005年11月21日(月)18:30〜20:30
場 所:日本新聞協会大会議室
参加者:28名


 2006年4月1日から地上デジタル放送の携帯・移動体端末向けサービス「ワンセグ」が始まる。放送と通信の融合が情報通信分野における大きな政策課題となっている中で、マルチメディア研究部会では、放送と通信が連携するサービスの象徴的な存在のひとつになることが予想されるこの「ワンセグ」について、放送事業者の取り組みの現状と課題、携帯電話事業者から見た期待と課題について紹介してもらい、その方向性や課題について意見交換を行った。

 研究会では、まず、NHKの石川氏から、・ワンセグの概要、・4月1日のサービス開始地域、・サービス内容、特にドラマ番組、災害時の緊急放送、クイズ番組において放送・通信連携機能を活用したサービスの例について説明があり、次いでユーザーの利用意向に関するアンケート結果の紹介があった。その中で、ワンセグサービスの利用意向を示すユーザーは約75%、携帯電話の次の買い替え時にワンセグ端末の購入意向を持つ人は約30%、利用したいシーンとしては待ち合わせなど次の予定まで時間がある時、停電や災害でテレビを見ることができない時、電車やバスなどで移動している時などで、必須と考える利用エリアは地下街や地下鉄ホーム、見たい番組はニュース、天気予報、災害情報など、双方向サービスで利用したいのはクーポンや音楽のダウンロードなど、月々の支払い可能金額は100円〜1000円であることなどが紹介された。その上で、放送事業者としては、当面はサイマル放送という制約や、受信エリア拡大のための設備投資などの課題があるものの、ユーザーの期待にこたえるため、いつでも、どこでも、簡単に利用できる放送・通信連携サービス、ユーザーの利用形態や番組・情報ニーズに即したサービスの提供を行う必要があり、携帯電話事業者の協力のもと、視聴者の利便性に適したビジネスモデルの構築とサービスの開発を行うことが必要だとの認識が示された。

 次いで、NTTドコモの石川氏から、携帯電話事業者から見たワンセグへの期待として、移動視聴・屋外視聴による新たなテレビ視聴文化や視聴時間の創出、放送とモバイルインターネットが携帯端末画面上で出会うことによるメディアの中での独自のポジションニング、テレビが携帯電話に載ることによる携帯電話の他のサービスとの連携などが、具体的な例を挙げて紹介されるとともに、これらを通じてワンセグが独自の文化をもったメディアとして成長することへの期待が表明された。また、ワンセグ付き携帯電話の普及のための課題として、放送事業と携帯電話事業の文化の違い、放送事業者のサービス展開のための初期投資の度合いなどが指摘され、サービス開始時期からメディアとしての可能性が感じられるようなさまざまなトライアルが行われ、それに視聴者やスポンサーが興味を持ち、それらに前向きに対応することにより、2008年には将来性が大いに感じられるようになっていれば理想的な展開だとの認識が示された。

 これらを受けて、報告者、討論者と出席者との間で、ワンセグを利用できる携帯電話によるサービスの方向性、携帯版サーバー型放送の可能性、FTTH時代の地上デジタル放送とワンセグとの関係、ポッドキャスティングの成功とワンセグとの関係、非常災害とワンセグとの関係、などについて活発な意見交換が行われた。