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■ 第30期第21回研究会(国際交流委員会企画)終わる


テーマ:「読売バークレー講座の12年」
 日   時:2007年5月16日(水) 18:30〜20:30
 場   所:日本新聞協会 大会議室
 主   催:国際交流委員会
 報 告 者:岩田伊津樹(読売新聞東京本社・調査研究本部主任研究員)

 読売新聞は1995年から、アメリカ・カリフォルニア大学@バークレーで、「読売バークレー講座」を実施している。もともと日米間ではアメリカのニュースが日本に流れ込むことが圧倒的に多いという実態があるうえ、米メディアが日本について書く少ない記事にはしばしば古い日本のイメージがそのまま残り、誤解を与えかねないという問題がある。

 そこで、外国のジャーナリストたちが日本についての正しい知識を身に着け、それを記事に反映してもらうのを主なねらいとして、この講座はスタートした。90年代、多くのアメリカ人が日本に関心を持っていたこともあってこの講座を始めたが、バブル崩壊後、彼等は次第に関心を失い、今はアジア系ジャーナリストの受講者が多くなっているという。

 岩田氏が担当した2006年には、例えば、日本の右傾化と憲法改正、環境問題、小泉劇場、安全保障、東アジア経済圏、社会格差の拡大、若者文化、北朝鮮拉致問題、女帝論争、サブカルチャー、戦争の記憶などのテーマが取り上げられた。それらの問題について、米谷ふみ子さん、青木冨貴子さんら、それぞれ専門の著名なゲストを招きながら、受講生と議論を展開した。また、米国メディアの日本報道については具体的に例をあげて問題点を指摘し理解を求めた。

 このコースの終了後にはインターンシップも用意されており、日本の読売新聞で実習を行った受講生もいる。日本を感じながら研修を受けられることは、彼等にとって大変良い勉強になっているという。

 1時間ほどの報告の後、質疑応答が行われた。米メディアの報道には、日本は特殊な国であると言うことを浮き立たせる傾向があること、日本やその他の国が何故アメリカにつかざるを得ないかについて彼等には知識不足があること、アメリカ人には各民族についてのステレオタイプが出来上がっているのでそれを改めさせるのは大変なことなどが指摘された。

 さらに、3-4月にかけて岩田氏が取材した中国・黄砂の源流地帯ルポの写真をみながらお話しを伺い、日本でも問題になっているホットな話題でも盛り上がった。参加者はお土産としてその記事が掲載されている『読売クォータリー』創刊号を頂戴した。

 大変インフォーマティブであり、また、とかく内にこもりがちな最近の日本にとって、今喫緊の課題である「情報発信」について議論できたことは、大変、有意義であったと思う。
(記録執筆:小玉美意子)