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■ 第28期第18回研究会(放送研究部会企画)終わる
テーマ:「ドキュメンタリーの可能性〜過去・現在・未来」

報告者   : 菊 地 浩 佑(元「NNNドキュメント」プロデューサー)
司会者   : 音   好 宏(上智大学)
日時    : 2003年3月4日(火) 18:00〜20:00 
場所    : 日本新聞協会大会議室(日本プレスセンタービル7階)
参加人数  : 23名

記録原稿執筆: 音好宏(上智大学)


 地上デジタル放送の開始を控え,ローカル放送のあり方に関する論議が活発になってきているが,その課題の一つとして,ローカル放送局の地元に根ざした取材力・番組制作力の強化が問われている。ローカル局の取材力・制作力が結実した番組ジャンルの一つが,地域を題材にしたドキュメンタリー番組である。今回の報告者である菊池浩佑氏は,1962年に日本テレビ入社以来,2002年夏に現場を離れるまで,長らくドキュメンタリー番組の制作にたずさわってきたドキュメンタリー番組制作の第一人者である。

 菊池氏の報告では,日本テレビ系列のローカル放送局がドキュメンタリー番組を発表する場として定着している「NNNドキュメント」を例に挙げながら,まず,日本のドキュメンタリー番組の制作の歴史的展開と現状について解説がなされた。特に,日本のドキュメンタリー番組制作の草分け的存在と言える牛山純一氏の下で,ドキュメンタリー作りを学んだ菊池氏の個人的な体験などを披露しながら,日本のテレビ草創期に,ドキュメンタリーについて,制作現場でどのような議論がなされたのかが紹介された。その上で,1983年以来,15年にわたり「NNNドキュメント」プロディーサーとして制作現場を統括した経験を踏まえ,ローカル局が全国ネット枠のドキュメンタリー番組に関わることの持つ重要性と,その課題について解説。特に,ドキュメンタリー制作者間の人的ネットワークが番組制作力の維持・発展にいかに寄与するかなど,具体的事例を上げながら論じた。

 今回の研究会では,放送番組制作の現場経験者の出席も多く,現場感覚のある突っ込んだ論議がなされたことが印象的であった。