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■ 第28期第17回研究会(ジャーナリズム研究部会企画)終わる



テーマ  :「裁判員制度と取材・報道の自由――欧米の実態を踏まえて−」

報告者  : 山 田 健 太(青山学院大学講師
司会者  : 本 橋 春 紀(日本民間放送連盟)
日 時  : 2003年3月3日(月) 18:00〜20:00
場 所  : 日本新聞協会大会議室(日本プレスセンタービル7階)
参加人数 : 15名

記録原稿執筆: 本橋春紀(日本民間放送連盟)


 政府の司法制度改革推進本部において、職業裁判官とともに一般市民が刑事重大事件の裁判に参加する「裁判員制度」の導入が検討されているが、そのなかで裁判に対して報道が与える影響が議論の俎上にのぼっている。研究会開催の時点では、具体的な論点はまだ明らかになっていなかったが、・裁判員に予断を与えるような報道の是非、・裁判員への直接取材の可否――などが取材・報道との関係で問題とされる可能性があった。(研究会後の3月11日に司法制度改革推進本部事務局は制度設計のたたき台を公表したが、この中には上記の取材・報道規制が含まれていた)

 山田氏の報告によると、陪審制や参審制をとる諸国では、法廷侮辱の法理によって、裁判報道(公判開始前の逮捕などの手続きについての報道を含む)に対して一定の規制が加えられているケースも多く、英国では伝統的な慣習法に加え、1981年に制定された法廷侮辱法(the Contempt of Court Act 1981)によって厳しい取材・報道の規制が行われている。一方、米国では憲法修正1条を重視する司法判断の流れがあり、法廷侮辱が報道に適用されることは非常に限られたケースのみであると指摘した。山田氏はこうした海外の状況を踏まえたうえで、日本の現状について、警察・検察情報に偏った報道スタイルの改革が必要な一方で、裁判報道の自由を拡大する方向でこの機会を利用すべきだと主張した。

 報告を受け、裁判報道がもつ市民社会の監視役としての機能、裁判の公正との関係などが議論されたほか、人権擁護法案や個人情報保護法など事件報道に何らかの規制を加えようという動きとの関連についても意見交換が行われた。山田氏が最後に、・「報道」が社会的に再定義される時代となっている、・報道評議会のような自律的機関がこうした規制の動きへの唯一の対抗手段であるとの総括を行い、研究会を終えた。