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■ 第28期第13回研究会(放送研究部会企画)終わる
テーマ:「IT時代における放送のあり方〜文化と制度を中心に」
報告者:片岡 俊夫(放送法制研究者)
村木 良彦(トゥデイ・アンド・トゥモロウ)
司 会:村澤 繁夫(民放連)
日 時:2002年5月15日(水)18:30〜20:30
場 所:日本新聞協会 大会議室(プレスセンタービル7階)
参加人数:23名
記録執筆:村澤 繁夫(民放連)
IT時代における通信・放送の融合問題に関連して、IT戦略推進本部や経済
産業省、公取、経団連、総務省などで通信・放送制度の見直し論議が高まっている。
本研究会では、これらの論議が主に経済振興や自由競争の視点から機能別行政、ハ
ード・ソフト分離などを導き出すものであることを批判的にとらえ、これからの放
送のあり方について、制度と文化を中心とした視点からの問題提起が行われた。
通信・放送一本化構想について報告者の片岡会員は、経済産業論中心の未整理な
論議が強まる傾向を憂慮するとしたうえで、放送には放送番組編集の自由、通信に
は通信の秘密があり、両者が理念的に一緒になることはありえない、ハード・ソフ
ト分離があったとしても、放送と通信は厳密に区分しうるとの考えを示した。放送
のあり方は明確にしておくべきであり、その点で最近のCS・BS放送行政には危
うい面があるとの指摘はもっともである。規制の根拠は、電波の有限希少性でよい
のではないかという。
村木氏は、一億総個性化をうたった中曽根内閣の教育改革とメディアの多様化と
のパラレルな方向性を指摘したあと、通信と放送の本質的違いを無視して、いきな
り水平型の産業形態につなげる考え方に疑問を呈した。次いでハード・ソフト分離
はCSでは失敗したとして、独占的な衛星放送会社が利益を得、コンテンツ供給者
が経営難に陥っている実情をあげた。また、新しい制度の検討には、公共放送、基
幹放送とは何か、未来型放送ビジョンをどう描くかといった議論とともに、従来の
動物系神経伝達イメージだけでなく植物系の伝達方法をあわせた生態的な考え方が
必要だと論じた。同時に、新放送法の第1条には「コミュニケーションする権利」を掲げ、これを基本にしたシステムを作るべきだと提言したことは示唆に富む。
主な質疑では、市場原理と公益性確保のバランス、あるいは公益性確保のための
保護政策をどう考えるか、NHKは公共放送か、などといった議論が展開され、片
岡会員から「パブリックコントロールを経営理念の基本においた放送局があるべき
だ」との持論が示され、村木氏からは「水平分離に反対して、既存業界は一体何を
守るのか」との、放送のあり方に関する根源的な疑問が突きつけられた。いずれも、
今後の議論につながる重要な問題提起であったと思う。