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■第28期第9回研究会(放送研究部会企画)終わる


  テーマ:「テレビメディアと危機報道〜エスニック・メディアの視点から」

  報告者:白水 繁彦(武蔵大学)
  司 会:成田 康昭(立教大学)
  日 時:2002年3月20日(水)18:00〜20:00
  場 所:日本新聞協会 大会議室(プレスセンタービル7階)
  参加人数:12名
  記録執筆:成田 康昭

 放送研究部会では,昨年9月11日米・同時多発テロ事件と米軍によるアフガニス タン攻撃に関連して,「テレビメディアと危機報道」というテーマを企画した。第 3回研究会ではそのうち「テロ報道」に焦点をあてたが,今回は,前回にも議論に なったナショナリズムとメディアという問題について,エスニシティーの視点から メディアを見直す試みとして,日系ハワイ人のエスニック・メディアの研究,在日 外国人によるエスニック・メディアの研究を続けておられる白水氏に報告をお願い した。白水氏は危機報道時におけるメディアの行動を主流メディアとの対比でエス ニック・メディアを分析し,9月11日のような大きな事件では,小規模なエスニッ ク・メディアにはニュースが入らず,主流メディアに大きく後れをとらざるを得な かったという事実や,エスニック・メディアは自分たちの同胞に降りかかる事件に 関しては丹念な取材によって,ユニークな成果を上げているケースがあり,限定さ れた集団のためのメディアという性格がむしろ強いことを指摘した。

 つぎに,エスニック・メディアに,事件・事故を相対化する視点は可能かという 問いについて,主流メディア症候群(見えなくする装置)とエスニック・メディア 症候群(蛸壺化する装置)という対比から分析した。そこでは皮肉にも,主流メディ アが陥っている視野が狭くなる傾向に対応するように,エスニック・メディアもま た,自己のエスニック集団に対してしか関心を持たない傾向が見られるという指摘 がなされた。つまり,エスニック・メディアがそのまま「開かれた視点」を持つわ けではないという。

 参加者との質疑応答のなかでは,このような閉じられた状況をどのようにすれば 突破できるのか,という問題に関心が集まった。特にエスニック・メディアの編集 者が人権に対して敏感である点など,マイノリティーとしての立場からの可能性, また,ローカル新聞,CATVなどに在日外国人の話題を丹念に取り上げて成果を上げているものがあるなど,ローカルなメディアがエスニシティーに着目しながら変わっていく可能性なども見られる点が議論された。