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■ 第28期第1回研究会(メディア史研究部会)終わる


テーマ:「新聞・放送資料の所在情報と利用方法」

報告者:木田実(NHK)
     橋本美紀(国立南全図書館)
司会者:山口誠
開催日時:2001年9月7日(金)18:00〜19:30
場  所:日本新聞協会大会議室(プレスセンタービル7階)
参加者:20名
記録執筆:山 口   誠

 今回の研究会では,メディア史研究にとって欠かすことのできない資料の所在情報と利用方法をテーマに据え,NHKが建設している「NHKアーカイブス」と国立国会図書館が構築している「新聞総合目録」の二つを取り上げた。
 前半では,NHKアーカイブス建設事務局・担当部長の木田実氏より,2003年2月から運用開始予定の「NHKアーカイブス」(埼玉県川口市)の施設槻要と放送協会における位置付けをお話頂いた。NHKでは放送番組を制度的に保存することを1981年から始めたが,2000年末で165万本(東京69.5万,地方局95.5万)のタイトルが保存されているという。この膨大な番組のデータベースは著作権と肖像権の保護を目的として,現時点では放送協会内での利用に限定されている。2003年の「NHKアーカイブス」運用以後でも,協会職員がアクセスできる「総合データペース」と一般利用者(研究者も含む)が利用できる「公開用データベース」を峻別し,後者では諸権利に対処できた3300タイトルの番組だけを公開するという。
 たしかに専門学芸員の不在や,著作権の問題など,NHKが保存している貴重な映像資料を公開するには多大な困難が予想される。それを認識したうえで,たとえばBBCのWritten ArchivesやNational Sound Archiveや横浜の放送ライブラリーや銀座の国立近代美術館フィルムセンターなどの先行アーカイブスと比較した場合,「NHKアーカイブス」の基本姿勢には疑問が残る。研究会の出席者からも「公共財としての番組資料」や「情報公開」をどう考えているのか,といった貴重な質問が出た。
 後半では,国立国会図書館・新聞目録係長の橋本美紀氏より,同図書館の逐次刊行物部新聞課が進めている「新聞総合目録」について,試験運用版の実演もふくめてお話頂いた。同目録は,「どんな新聞資料をどこの図書館や機関が保存しているか」を網羅的に検索でさるサービスである。たとえば国会図書館に保存されていない貴重な新聞資料の数々も,この目録を使えば所在が分かるかもしれない。現在,書誌情報で1850件,所蔵件数5万件の情報を,1300の機関の協力をうけて入力できたという。協力した大学図書館などでは,既に同目録を試験的に利用させている所もある。橋本氏のお話では,膨大なアクセス数に耐え得るサーバーの確保や書誌情報のメンテナンスなどの困難が予想されるものの,今年度末には一般公開を目指して努力されているという。
 この「新聞総合目録」がインターネット経由で一般に公開された場合,NACSIS Webcat(国立情報学研究所の総合目録データベースwww検索サービス)に匹敵する研究環境の飛躍的な向上が期待できる。国内のメディア史研究者はもちろん 国外で近代日本史に取り組んでいる研究者にとっても,大きな助けとなるだろう。驚くべきは,書誌情報の更新とバックアップという膨大な作業を,国会図書館の数人の暇員だけでおこなっているというお話である。こうした優秀な司書の方々の努力に支えられて,メディア史研究の環境が整備されていくことに対して深く感謝したい。